──────…その頃。

俺も、シルナも、シュニィもアトラスも吐月も。

クュルナもキュレムもルイーシュも、ジュリスも無闇もイレースもエリュティアも。

誰もが、その異様な魔力を感じ取っていた。

聖魔騎士団魔導部隊大隊長の彼らが、一堂に会するとき。

そこには、かつて世界に君臨していた聖なる神がいた。

「…シルナ。あれは…」

間違いない。この神々しいまでの魔力。

「…そう、ベリクリーデちゃん…目覚めたんだね」

シルナは、ぽつりとそう言った。

…そう、やはりそうか。

ベリクリーデの中にいる、聖なる神が…目を覚ましたのだ。

裏切り者のシルナに、鉄槌を下す為。

そして、今度こそ邪神を討ち滅ぼす為に。

聖なる神は、正しい存在。

禍なる神は、間違った存在。

どちらの味方をするべきかなど、考えるまでもない。

ならば今、この場で殺されるべきは…シルナ・エインリーと、この俺だ。

しかし。

「…アトラスさん」

「あぁ、分かってる」

シュニィとアトラスが。

「…学院長には、手を出させない。…ベルフェゴール」

吐月が。

「…学院長の味方をする理由はあっても、あなたの味方をする理由はありません」

クュルナが。

「聖なる神様だろうがなんだろうが、こちとら学院長に命を救われた身でね」

「考えるのも面倒ですし、俺は皆さんの味方をしますよ」

キュレムとルイーシュが。

「まぁ、学院長には義理があるしな」

ジュリスが。

「俺もそうだ。聖なる神などより、シルナ・エインリーに対する恩を返す」

無闇が。

「…考えるまでもありません。どちらに味方するかなど」

イレースが。

「僕の夢を叶えてくれたのは学院長だ。だから、僕は学院長の味方をする」

エリュティアが。

正しい存在に向かって、牙を剥いた。

そして、勿論俺も。

「…俺がシルナの味方をしなかったら、他の誰が味方になるんだよ」

例えシルナに杖を向けられても、俺はシルナを裏切るつもりはない。

聖魔騎士団魔導部隊の精鋭達に杖を向けられ、ベリクリーデは冷えきった目で俺達を見下ろした。

「…堕ちた聖賢者に洗脳された、憐れな者共」

「何とでも言え、ばーか!」

キュレム。煽るな。

聖なる神様相手に煽りを入れるなんて、キュレムくらいだ。

「ここにいる誰もが、シルナ・エインリーに救われた者達なのです。己の命の恩人を、裏切るような真似は決してしません。魔導師の誇りに懸けて」

と、シュニィ。

彼女の言う通りだ。

ここにいる誰もが、シルナに救われた。

そのシルナを、裏切るようなことは決して…。

「…お前達は知らないだけだ。シルナ・エインリーに騙されていることを」

「…?」

…騙されている?

「シルナ・エインリーを裏切るような真似はしないと言ったな。だが、シルナ・エインリーはいずれ、お前達を裏切るぞ。かつて、死者の思いの全てを裏切ったように」