試験が無事に終わった後。

私はアトラスさんに言われた通り、訓練場を訪れた。

「あ…シュニィ…」

「あぁ、アトラスさんごめんなさい。待たせましたね」

「いや…大丈夫だ」

アトラスさんは、訓練場の壁際に設置してあるベンチに腰掛けて待っていた。

私は彼の横に座った。

話って…一体何だろう。

さっきまであんな虚しい気持ちで一杯だったのに、彼の隣に座ると、そんな気持ちも何処かに消えてしまった。

あぁ、やっぱりここは居心地が良い。

「話って、何ですか?」

「ん、あぁ…」

アトラスさんは、そわそわした落ち着かない様子だった。

珍しいこともあるものだ。

「アトラスさん…?」

「いや、その…。そうだ、つ、疲れてない…か?試験…長かったし」

「疲れて…。いえ、大丈夫ですよ。それよりアトラスさんの方が疲れてるんじゃないですか?」

アトラスさんの方が、私より遥かに動き回っていたのだから。

しかし、アトラスさんは。

「いや…俺は大丈夫だ。体力だけは、人一倍…いや、人三倍はあるからな」

「ふふ…そうでしたね」

あと、腕力もね。

「それで…お話ししたいことというのは…」

「それは…その…。俺は、お前が…」

「…私が…?」

何?私が。

アトラスさんは何かを言おうとして、もごもごと口ごもってから。

「その…。し…試験!そう、試験…終わったな」

「…?はい…そうですね」

「シュニィのお陰で、優勝することが出来た。本当に…ありがとうな」

「いえ、こちらこそ。あなたがいてくれたから…私も、最後まで頑張ることが出来ました。こんなに達成感のある試験は初めてです。ありがとうございました」

同時に今、虚しさを抱えていることは…アトラスさんには、言わなかった。

言えるはずがない。

…で。

言いたいことっていうのは、それなのか?

「…シュニィ、その…」

「はい…?」

「えっと…。だから…お前を、その…」

「…?」

アトラスさんは、何故か顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「どう…したんですか?」

「…」

私は…何を、どうしたら良いのか。

何かを察するべきなのだろうが…それはあまりに厚かましい気がした。