家庭でそんな風に苦しめられていた僕だが。

学校に行けば、弟の世話からは解放される。

僕にとって唯一の安らぎの場だった。

高学年になるにつれて、僕は自分の進路について、真剣に考えるようになった。

僕の希望する学校は、何と言っても、魔導師養成学校だった。

それも、王都セレーナにある、天下のイーニシュフェルト魔導学院。

あるいは、そのイーニシュフェルト魔導学院に次ぐ、ラミッドフルス魔導学院。

魔導師の卵なら、誰でも憧れる学校だ。

自分にはおこがましいかと思ったが、それでも憧れが消せる訳ではない。

出来ることなら、王都の優秀な魔導師養成学校に進みたい。

更に、イーニシュフェルト魔導学院やラミッドフルス魔導学院は、全寮制の学校だ。

全寮制の学校に行けば、僕は弟の世話から解放される。

そんな打算もあった。

だから僕は、懸命に勉強した。

母はそんな僕を笑った。

イーニシュフェルト魔導学院なんて、あんたに入れるはずないじゃない、と。

この頃には、父はとっくに僕を蔑ろにするようになっていた。

父もまた母のように、僕を馬鹿にして笑った。

お前なんかがイーニシュフェルト魔導学院に入れるなら、誰でも入れる、とまで言われた。

でも僕は、その言葉を無視した。

魔導適性もない人間に、イーニシュフェルト魔導学院を目指す者の気持ちが分かるものか。

なんとしても、王都の魔導師養成学校に入りたい。

そして僕のその願いは、神に届いた。

そう、僕は王都セレーナにある、イーニシュフェルト魔導学院の入学試験に、見事合格してみせたのである。