両親は、興味をなくした弟の面倒を、僕に見るように言い始めた。

冗談じゃない、と僕は思った。

何故僕が、弟の面倒を見なければならないのだ。

今まで散々、僕のことを邪魔者扱いしていたのに。

今度は弟が邪魔になったから、その弟を、同じく邪魔者の僕に押し付けるのか。

僕は弟の面倒なんて見たくなかった。

弟のことは、元々好きではなかったのだから。

僕は抗議した。知的障害者を馬鹿にするつもりはないが、まだ自分も子供の身なのに、幼い障害児の面倒なんて見られない。

それなのに。

母はその時期に、またしても妊娠した。

その子は完全に、両親にとって、弟の代わりだった。

両親の関心は、愛想のないインチキ占い師見習いの長男でも、知的障害を持って生まれた次男でもなく。

この可愛くない二人の子供に代わる、新しいお腹の中の子供だけに向けられた。

そして、母は妊娠悪阻を盾にして、僕に弟の面倒を見させた。

自分は悪阻で苦しいから、長男のお前が弟の面倒を見てくれ、と。

なんとも最もらしい理由をつけているが、僕にとっては、弟の面倒を見たくない口実に過ぎなかった。

それでも体調不良を盾にされれば、僕も無視することは出来なかった。

僕はそれからというもの、さながら、弟の専属介護士となった。