決勝戦は、正直なところ準決勝より楽に勝つことが出来た。

決勝なので、向こうの魔法の質もレベルも高くて、連携も取れていたけど。

しかし、私達ほどではなかった。

私が出す指示の通りに、アトラスさんは動いてくれた。

私の言う通りに動いていれば、必ず勝てると信じきっているかのよう。

そこまで信じてくれたのは嬉しいが、何だか素直で可愛らしい。

そして。





「はい、シュニィちゃん。アトラス君。優勝おめでとう」

壇上に立って、にこにことトロフィーと賞状を差し出す学院長。

私は、本当に自分がもらっても良いのかなと思いながら、おずおずと手を伸ばした。

…もらってしまった。

トロフィーと賞状。

このトロフィーって、これまでは遠目に眺めていただけだったけど。

意外に重かったんだと、初めて知った。

まさか自分が決勝まで進み、しかも勝てるなんて思っていなかった。

だから、何だか優勝の実感が沸かない。

アトラスさんは、根拠のない自信で勝てると確信していたようだけど…。

「今回の試験は、魔法の創意工夫と、戦況を広く見る視野の広さが物を言ったね」

学院長は私に向かってそう言ったのだが、何故かアトラスさんがどや顔だった。

ふふんそうだろうそうだろう、と言わんばかり。

皆から拍手され、学院長からも賛辞を受け、この上ない名誉を得たはずなのに。

私は何故か、喜びよりも、虚しさの方が勝っていた。

だってこの試験が終わってしまったら。

アトラスさんの隣という…この居心地の良い場所に、もういられなくなってしまうのだから。