学院長まで来てしまった…どうしよう。

何だか事が大きくなってしまったような。

「おいシルナ。この頭金髪女、どういう教育してんだよ。こっすい戦い方してると思ったら、負けた途端『ルール違反だーアルデン人だからー』とか言い出したぞ。幼稚園からやり直させろ」

学院長相手に、非常に口の悪いグラスフィア先生である。

この学校で学院長にこんな口を利けるのは、グラスフィア先生だけだろう。

「まぁまぁ落ち着きなさい。君も。負けて悔しいのは分かるけど、これはあくまで試験なんだからね。そんなにムキにならない。それから、うちの生徒は皆平等です。人種は関係ありません」

「…はい」

学院長から直々に諫められ、素直に頷く金髪さん。

「アトラス君もね。シュニィちゃん馬鹿にされて怒るのは分かるけど。だからって喧嘩を売っちゃ駄目」

「…はい」

こちらも素直に頷くアトラスさんである。

…で、グラスフィア先生は。

「…良いこと言ってる顔してるけど、それさっき俺が言ったことじゃん。こいつパクリやがった」

ぽつりと呟いていた。

「こらっ、羽久。パクってないもん。オリジナルだもん」

「きめぇ。それよりさっさと決勝しろよ。もう時間だろ」

「だね。さぁ二人共。決勝戦を始めよう」

「…はい」

…少々、ケチをつけられてしまった感はあるが。

グラスフィア先生と学院長のフォローのお陰で、溜飲は下がった。

「…済まん、シュニィ」

アトラスさんが、小さな声で私に謝った。

「あなたが悪い訳じゃありませんよ。それに…ありがとうございます」

私を庇ってくれた、そのことが嬉しかった。

…アトラスさんが、何だか気になる一言で私を呼んでいたことについては、とりあえず決勝が迫っているので、考えないことにした。