「シルナから離れろ…。どういう意味だ?」

「言葉通りの意味だ」

エヴェリカ…だった者は、何処か遠くを見つめていた。

まるで、過去に思いを馳せているかのように…。

「お前は、人間の振りをしているに過ぎない私が…『エヴェリカ』が偽者であることに気づいていながら、本気でエヴェリカと共に悩み、怒り、心の底から助けようとしてくれた」

「…それは…」

「その姿を見ていたからこそ分かる。お前は善良な人間だ。優しい人間だ。…だからこそ、これ以上シルナ・エインリーの下で、魂を穢す必要はないんだ」

…。

「あの男がお前達のような、優秀な魔導師を集めているのは、何故だと思う?」

「何故って…。それは、ルーデュニア聖王国を守る為に」

「そんなものは建前だ。本当の理由は違う」

シルナが聖魔騎士団を作った、本当の理由。

それは、ルーデュニアや、フユリ様を守る為ではなく…。

「…いつか来るであろう、禍なる者の復活に対抗する為なんだろう?」

…俺だって、伊達にシルナと長く共に生きてきた訳じゃない。

その辺りの事情は、大体察している。

お互い、その話題は避けるようにしていたけれど。

「その為に、自分に付き従う戦力を増やしてる。聖魔騎士団を作ったのは、そういう理由だ」

「…知っていたのか」

「…あれだけ長く、一緒にいればな」

嫌でも気づくよ。

シュニィやアトラスや、吐月達は気づいていないのかもしれない。

シルナの、綺麗な部分しか見たことがないのだから。

でも、俺は違う。

シルナの、後ろ暗いところを知ってる。

一番シルナの近くにいた、俺だからこそ…。

…いや。

あくまでも、俺は二番目だ。

一番シルナの近くにいたのは…俺じゃなくて…多分、俺のオリジナル…。

「…知っているなら話は早い。今すぐに、シルナ・エインリーから離れるんだ」

「この期に及んで、逃げる訳がないだろ。例え禍なる者が復活しようとも、聖魔騎士団が命を懸けて…」

「…違う」

エヴェリカは、静かに首を横に振った。

…違う?

「あの男は、お前達が思ってるほど甘くはない」

「…何だと?」

「かつて世界が禍なる者に呑まれ、混沌の時代に陥ったとき…。聖なる神と禍なる神が対峙したとき、あのシルナ・エインリーが何をしたか…。お前達は、何も知らされていないんだ」

…。

…聞いてはいけない。

これ以上聞いたら、俺は…。

「あの男にだけは協力してはいけない。彼が自分の周りに仲間を集めているのは、彼らと協力して禍なる者を倒す為ではなく、彼らを…」

















「…黙れよ」