「…」

「…」

二人は、お互いに無言で見つめ合った。

エヴェリカは、少し驚いた様子だった。

まさかバレているとは思わなかったのだろうか。

「…何のこと?サナキ君。人間の振りって…」

そしてあろうことか、まだ人としての体裁を取り繕おうとした。

「しらばっくれるなよ。お前が人間じゃないことくらい、最初からお見通しだ」

「…」

「上手く人間に化けたつもりか?『禁忌の黒魔導書』の分際で」

彼女と喫茶店に行かなかったのは、こういう理由だ。

エヴェリカが、人間でないことを暴く為に。

他の人がいる前では、言い出せないからな。

「…ふ、ふふ…。そうか。やはり気づいていたか…」

その瞬間。

エヴェリカは、エヴェリカの皮を剥いだ。

「ここまで気配を消して、人間と同化していれば、気づかれないと思ったがな」

「あめぇよ。こちとら、探索魔法のプロがいるんだ」

その程度、見破るに決まってるだろうが。

むしろ、何故俺やシルナを前にして、バレてないと思ってたのか聞きたいくらいだ。

そう、エヴェリカは人間ではない。

ただ人間の振りをしていただけで。

最初から気づいていたことだ。

気づいていたから、わざと彼女に接触した。

『禁忌の黒魔導書』を討伐するという、聖魔騎士としての役目を果たす為に。

「…悪く思うな。これが、魔導師としての俺の役目なんだ」

「…成程。抵抗しようにも、無駄だろうな…。お前が、シルナ・エインリーの手先なら」

…シルナだと?

「何故そこでシルナの名前が出てくる?」

「お前は知らないんだ。あの男が、かつて世界を救う為に、何をしたのか」

「…」

…何のつもりだ。

そうやって、俺を惑わそうとしているのか。

「私はお前に封じられるのだろう。だが、その前に一つだけ助言する。…今すぐにシルナ・エインリーから離れろ」

「…」

シルナから…離れろ、だって?

それは…どういう意味だ?