グラスフィア先生に間に入られては、双方動くことは出来なかった。

いや、それでもアトラスさんは臨戦態勢だったけど。

「ったく、騒がしいと思って来てみれば…。何だって?誰が卑怯なことしたって?」

「ひ、卑怯なことなんて、シュニィは何も…」

「本当に卑怯な真似をしたんだって言うなら、連れてきてみろ。俺がまとめてぶっ飛ばしてやらなきゃいけないからな」

ぎらり、と目を光らせるグラスフィア先生。

これには、その場にいる全員が、私も含めて、生唾を呑み込んだ。

…この人の手にかかったら、この場にいる全員が、あっという間に塵にされてしまうことだろう。

「それで?この子達の何が卑怯だって?言ってみろ」

グラスフィア先生は、金髪さんに尋ねた。

「だ、だって…。剣を使ったり…」

「剣士なんだから剣くらい使うだろ。自分だって魔導師だから杖使ってるじゃないか」

まぁ…確かに。

「でもっ…。魔法で剣を強化するなんて、そんなルール違反みたいなこと…!」

「何がルール違反だよ。お前アホか?実戦で敵が剣と魔法組み合わせて使ってたら『ルール違反だ~』とか言いながら死んでいく訳?あれで卑怯って言うなら、あんな分かりやすい目眩ましを撃ちまくって、不意討ちで敵を倒す戦法使ってるお前らも、同じくらい卑怯なんじゃないの?」

「そ、それは…」

グラスフィア先生も…彼女達の戦術に気づいていたんだ。

当たり前だ。私が気づいて、グラスフィア先生が気づかないはずがない。

何せこの人は、この学校で唯一の…。

「人の工夫や作戦に文句つけてる暇があったら、次戦ったときにどんな作戦を立てるかでも考えたらどうだ?イーニシュフェルトの生徒ともあろう者が、情けない。自分の弱さを棚に上げて、人の人種を責めるなんて、無能を晒してるようなもんだろうが」

「…」

金髪のお団子さんは、何も言い返すことが出来ずに俯いた。

私は別に、言われ慣れてるからそんなに気にならないのに…。そこまで彼女を責めなくても。

「あとお前もだよ、馬鹿力剣士。アトラスって言ったっけ?」

「あ、はい…」

「相棒馬鹿にされて怒るのは分かるけど、そこで手を出したらお前が悪者だよ。悪いこと言わないからやめておきな」

「…はい」

渋々と引き下がるアトラスさん。

アトラスさんの言いたかったことは、一通りグラスフィア先生が言ってくれたからだろう。

すると、そこに。

「はいはい、何揉めてるのかな?」

シルナ・エインリー学院長が、ひょこひょことやって来た。