その日私が帰宅すると、妹が神妙な顔をして、私を待っていた。

「あ…お兄ちゃん…」

「…?どうかした?」

何か良くないことがあったんだ、と思った。

その顔色で分かる。

「その、これ…」

妹は、無惨に開けられた通販の段ボール箱を見せた。

あぁ、と思った。

その中身が何なのか、知らない私ではない。

何せ、それを注文したのは、他でもない私自身なのだから。

「…見たの?」

「…ごめん…。勝手に開けて。私も荷物、注文してたから…てっきり私のだと思って…。伝票をよく見ずに開けちゃって…」

あぁ、そうだったんだ。

それは仕方ないね。

段ボール箱の中に入っていたのは、先日私がお世話になった、ゴスロリ専門店のネット販売で買ったゴスロリワンピース。

何処からどう見ても、女の子の服だ。

兄がこんなものを注文していたのだから、それは戸惑うだろう。

「お兄ちゃん、どうしたの?この服…。誰かにあげるの?」

妹は、明らかに私を訝しんでいた。

そうだろうね。

俺はエガルテで、男なんだから、こんな女物の服を着るはずがない。

だとしたら、誰かにプレゼントする以外に考えられない。

そう思うはずだ。

私も、言ってしまえば良い。多少無理があっても。

そう、プレゼントなんだよと言ってしまえば、何とかこの窮地を乗り越えられるかもしれない。

でも。

「…あのね、それ…私が着るものなんだよ」

取り繕ったりは、しなかった。

もう少し後にしようと思っていたけど、もう良い。

良い機会だと思おう。

私は、絶句する妹に、全てを打ち明けることにした。