…は?

私も、アトラスさんも、教官も。

横で見ていたギャラリーも、皆ぽかんとしていた。

しかし金髪さんだけが、呻くポニーテールさんを抱き起こしながら、必死に叫んだ。

「こんなの無効試合よ!あんな作戦…卑怯じゃない!」

屈辱にぶるぶると震えながら、彼女はそう訴えた。

いや…卑怯じゃない…と言われても。

「大体何で、魔法も使えない奴が試合に出てるのよ!おかしいじゃない!」

「そ、それは…」

学校の決まりで、全校生徒が受ける試験だから…魔法が使えなくても関係ないはずでは?

だが、舌鋒は止まらない。

「それに、剣を魔法で強化するなんて…そんなの卑怯よ!公平じゃない!アルデン人だから、こんな卑怯な方法を思い付くんだわ。薄汚いアルデン人が…!」

「…!」

「薄汚いアルデン人」、なんて。

久し振りに聞いた。

久し振りに聞いて、そして久し振りにあの劣等感を思い出した。

その通りだ。

いくら私が試験で優秀な成績を取ろうと…私が「薄汚いアルデン人」であることに変わりは…。

「!お前…!」

私が恥ずかしさに俯くのを見て。

何故か、アトラスさんがぶちギレた。

「今の言葉を取り消せ!シュニィの何処が薄汚いって?俺の大事な恋人を侮辱するのは許さんぞ!」

喧嘩腰で剣を向け、決闘を申し込まんばかりのアトラスさん。

何だかとんでもない一言が聞こえてきたような気がしたが、その意味を咀嚼する前に。

アトラスさんと金髪さんの間に、一人の男性が割って入った。

「落ち着け。血の気の多い若造共め」

時魔法の授業を担当する、羽久・グラスフィア先生だった。