──────…俺は、エヴェリカを連れて帰宅した。

シルナに会わせる為である。

「ただいま、シルナー。エヴェリカ連れて…」

きたよ、と言おうとしたら。

「…ふぇ?」

シルナは、スルメイカをがじがじ齧りながら、グレープジュースを飲んでいた。

…。

…。

…この際、スルメイカは良い。

でもグレープジュース。お前は駄目だ。

「…そこはせめて酒を飲めよ!」

何ジュース飲みながらスルメイカ食ってんだお前は!

どういう組み合わせだよ!

「え、だってお酒飲むと酔っぱらっちゃうから…。え!?お客さん来るなんて聞いてないよ!」

見てみろ、このエヴェリカを。

絶句してるぞ。

当たり前だ。初めて訪ねた家で、おっさんがスルメイカ食べながらジュース飲んでたら、そりゃびびるに決まってる。

ドン引き物だろ。

速攻帰られなかっただけ感謝しろ。

「ちょ、待ってスルメイカ…あっ、スルメイカ…食べる?」

人に勧めるな。

「いえ…。あの、結構です…」

困り顔のエヴェリカ。当たり前だ。

おっさんの食べかけのスルメイカを、誰が望んで食べるか。

金払われても嫌だよ。

「良いから、さっさと片付けろ!」

「わ、分かった分かった。すぐ片付けるから!」

慌ただしくスルメイカを袋に戻し、シンクにグレープジュースのコップを片付けに行った。

あいつ、俺がいなかったら平気であんなことしてんのな。

心底軽蔑したよ。

「…えっと。会わせたい人って…まさかあの人?」

心配そうな顔のエヴェリカ。

違うよ、って言って欲しいんだよな。分かる。

俺も言いたい。

でも言えないんだ。

「ごめん、エヴェリカ…。あいつなんだ」

「あっ…」

ごめんやっぱり帰ります、と言われなかったから、良かった。

エヴェリカの心の広さに感服である。