後日。

「ほら、見てよこれ」

「…おぉ…」

「可愛い?ねぇ、可愛い?」

「うん、可愛いよ」

と、言うしかないのだが。

全身ゴスロリ尽くし。

壮観だな。

頭には黒のヘッドドレス。ゴスロリ専門店で買ったばかりの、真っ黒なふりんふりんワンピース。

黒タイツに、黒いブーツ。

黒髪ツインテールのウィッグ。

何処からどう見ても、怪しいゴスロリ女子だ。

ゴスロリ好きな人ごめん。

でも、この格好でうろちょろするのは、精神的にキツい。

俺はそう思うのだが、エヴェリカは特に気にならないらしい。

むしろ、自分の好きな服を着られることが嬉しいようだ。

今までずっと抑圧されてきた分、余計女の子っぽい格好をしたいのかもしれない。

だからって、何故ゴスロリを選ぶのかは知らんが。

「本当はね、いつもスカートを履いて、それに髪も伸ばしたいんだけど…」

「…」

「小物なんかも、全部女物にしたいんだよ。でも、出来ないから…」

「…それは…」

…仕方ない。

人前では、男の振りをしなければならないのだから。

辛いだろうな。

本当の自分を、さらけ出して生きることが出来ないというのは。

「髪を切るときが一番辛いよ。あと、がっちりした自分の体型を鏡で見るのも…」

「…」

…そうだろうな。

自分は自分を女だと思ってるのに、身体は男なんだもんな。

自分が一番もどかしいだろう。

おまけに、その事実を誰にも話せないのだ。

「死ぬほど悩んだこともあるんだよ。今度生まれ変わったら、ちゃんと心と身体の性別が一致すれば良いな、って…」

「…」

「死んだってしょうがないと思い直して、諦めたけど…」

「…なぁ、嫌なことかもしれないけど、一つ聞いて良いか?」

「何?」

「結婚とか…どうするつもりなんだ?」

俺にとって結婚なんてものは、特に縁もないし、関心もないことだが。

貴族であるエヴェリカ…いや、エガルテ・アルヴァールとしては、縁がないなんて言える立場ではないはずだ。