その様子を見ていたクラスメイトからは、「なんだデートか?」なんてからかってきたけど。

俺はムカついたのだが、エガルテは爽やかな顔で、「ばーかそんなんじゃねぇよ」と、笑って答えた。

お前爽やかだな。凄いな。

俺には、とてもそんな気の利いた返しは出来ないよ。

二人で何処に向かうのかと思ったが、エガルテは。

「…ごめん。ちょっと喫茶店に寄って、二人で話がしたいんだ」

とのこと。

別に良いよ、と軽く答えて、エガルテに連れられて向かったのは、帝都一等地にある高級ホテルの喫茶店だった。

忘れてた。こいつ、こう見えて良いところの坊っちゃんなんだった。

ってか、あの学校の生徒は大体坊っちゃんなんだった。

俺くらいのものだ。平民は。

何なんだよこの店は。コーヒー一杯二千円ってふざけてんのか。

缶コーヒーなら15本くらい買えるぞ。

学校帰りに喫茶店寄ってこーよ、でこんな高級店に連れてくるとは。恐れ入る。

こんな値段出してお高いコーヒーやら紅茶やら飲みたくないので、別にお冷やでも良いのだけど。

エガルテは普通の顔してコーヒーを頼みやがるので、仕方なく俺は紅茶を注文した。

全く、どんな高級志向だ。

で、飲み物が揃ってから。

「ごめんね…。サナキ君。付き合わせちゃって…」

途端に女っぽい喋り方になった。

「わた…あ、俺の我が儘に付き合ってもらって」

「別に『私』で良いよ。エガルテが女だって知ってるんだから」

こんなときまで、演技をする必要はない。

せめて今くらいは、素で過ごしてくれ。

「ありがとう、サナキ君…。それと私のことは、エヴェリカって呼んでくれないかな」

「エヴェリカ?それがエガルテの…女としての名前?」

「うん、そう」

そうか。エヴェリカ。

そっちが本当のエガルテなら、そう呼ばないとな。

「じゃあエヴェリカ。宜しく」

「…ありがとう。そう呼んでもらうの初めてだから、嬉しい」

「…初めて?」

それは、一体どうしたことだ?