翌日。

エガルテ・アルヴァールは、普段と変わりなく過ごしていた。

その日は、剣術の授業があった。

イーニシュフェルト魔導学院では、魔法の授業が毎日のようにあるけれど。

ここでは、剣術の授業が毎日行われる。

俺は元々剣士じゃなくて魔導師だから、いまいち剣の扱いは上手くない…のだが。

まぁ、クラスで目立たない程度には、上手くやれているつもりだ。

それはそうとして、注目すべきはエガルテだ。

彼の剣術の腕前は、大変優れていた。

学年の中でも、頭一つ抜けている。

今日もエガルテは、皆の見ている前で、手本のような可憐な剣さばきを見せてくれた。

担当教官も、「皆エガルテを手本とするように」と言うくらい。

それだけ優秀でいながら、彼は全く驕ることがなかった。

他のクラスメイトにも優しく、誰にでも平等に接した。

面倒見も良くて、後輩からも慕われているそうな。

この学校は男子校だから、残念ながらクラスメイトの女子にモテる、ということはないのだけど。

もし共学だったら、女子生徒からは羨望の的になっていただろうな。

まさかこの完璧なエガルテに、女装趣味があるとは…誰も思わないだろうなぁ。

エガルテよ。言い触らすも何も、お前のその人徳では、言い触らしても多分、誰も信じないぞ。

彼の中身が実は女だなんて、誰が信じるだろう。

誰よりも強くて屈強な男、にしか見えない。

本人も、学校では男っぽい振る舞いや口調を心掛けているようだった。

一人称も「俺」だし、語尾も男のそれ。

完璧な演技である。

そんなエガルテは、放課後、俺のもとにやって来た。

「なぁサナキ。放課後、ちょっと付き合ってくれないか?」

勿論、その誘いを断る理由はなかった。