予定通り…いや、女装してたのは予想外だったが…。

とにかく、エガルテ・アルヴァールとの接触は果たした。

もう用事は済んだとばかりに、仮の家に帰宅すると。

そこには、いるだけで気が滅入りそうなおっさんがいた。

「うぅ…悲しい。悲しいよ…」

「…」

「なんて悲しい話なんだ…」

「…夕飯カップ麺で良い?」

「ちょっと羽久!あからさまに面倒臭そうな顔しないで!」

いや、かまちょうぜーと思って。

敢えて話を逸らしてやろうかと。

「あとね、夕飯は私が作るよ、頑張って。何食べたい?」

「カップ麺で良い?」

「無視しないで!」

何が嬉しくて、良い歳したおっさんの手料理食わなきゃならんのだ。

味はこれで悪くないから、余計腹立たしいよな。

不味い方がもっと腹立たしいけど。

カップ麺で良くね?どうせ魔導師だから、そんなに食べる必要ないし。

「それより聞いてよ、羽久」

「羽久じゃなくて、今はサナキだろ?」

「あ、そっか…。別に本名でも良いと思うけどなぁ。私本名で通してるし…」

馬鹿。

「聞く人が聞いたら分かるんだから、本名使うなよ…馬鹿だな」

「いやぁ、別にバレても…。それに、向こうから気づいて接触してくれるなら、むしろ有り難いでしょ」

そう、接触で思い出した。

「会ってきたよ。エガルテに」

「どんな子だった?」

「女装した子だった」

「…??」

首を傾げるな気持ち悪い。

何だ、その仕草は。

「なんか…性同一性障害?みたいな…」

「え?そうなの…?へぇ…」

へぇってお前。

もうちょっと気の利いた感想あるだろ。

それでも、なんちゃって精神科医か。

「羽久のこと見て、何も言わなかったの?」

「何も。そもそも気づいてなかった」

俺のことも、ただのクラスメイトとしか思っていなかったようだ。

このぶんじゃ、シルナに会っても、ただのおっさんとしか思われないだろうな。