「…あ、あれ」

「ん?」

私は、隣のコートで試合をしているペアを指差した。

「あの試合で勝った方と、次、私達が当たるはずです」

「ほう…どちらも六年生ペアだな」

「さすがに、準々決勝ですからね」

ここまで来れば、私達以外は全員六年生ペアだろう。

しかも、実力もかなりのもの。

特に、あの長髪の女子生徒二人のペア。

「凄いな…」

魔法にはあまり詳しくないアトラスさんも、思わず感心してしまうほどには、強かった。

対戦相手を圧倒した女子生徒二人のペアは、私の記憶が正しければ…。

「…今勝ったあの二人、確か前回の試験で優勝してましたね」

「そうなのか!道理で…」

私達が次、準決勝で当たるペアは、あの二人。

前回の優勝者と当たってしまう訳だ。

「それでも、シュニィの魔法の方が上手いな。大丈夫、勝てるぞ」

そして、相変わらず楽観的なアトラスさんである。

全く…もう慣れたから何も言わないけど。

それよりも。

「…アトラスさん。試合が始まったらまず、あのポニーテールの方を先に落としましょう」

「ん?」

私は、声を潜めてアトラスさんにそう言った。

「その方が効率的ですから。狙うなら、彼女を先に」

「何故だ?見たところ…もう片方の、金髪の方がアタッカーじゃないか?攻撃の数も多いし…」

うん。一見しただけだと、そうなんだけど。

「あの二人、三回戦のときもちらっと見ましたけど…。金髪でお団子髪の方が確かに攻撃の数は多いですが、あれはほぼ全部フェイントです」

「フェイント?」

「ただの目眩ましなんですよ。攻撃の数が多いと、どうしてもそちらに意識が向いてしまいますからね。でも、金髪さんの方に意識が向いた途端、ポニーテールさんが決定打を撃ってます。三回戦のときも、今も」

「…!」

それが、あの二人の作戦なのだろう。

片方が目眩ましの攻撃を撃ちまくって、そちらに気を取られているうちに、もう片方が不意討ちで決定打を放つ。

一見、私達と同じように前衛がアタッカーのように見えるけど。

実は、本当の役割は反対なのだ。

「だから、先にポニーテールさんを落としましょう。金髪さんの攻撃は、数は多いですが、所詮は目眩まし。一つ一つの威力は大したことがないので、無視です。気を取られないでください」

本当に警戒すべきは、ポニーテールさんの方の一撃だ。

「無視か…。うん、分かった」

「必要なら、私がその都度防御壁を張るので…。あなたは金髪さんの方は気にせず、ポニーテールさんの一撃にだけ警戒してください」

「よし、任せてくれ」

そして、アタッカーのポニーテールさんを落とせば、あとはこちらのものだ。

「さすが、よく見てるな、シュニィ」

「人間観察は、癖みたいなものですからね」

悪趣味なのは自覚してるが、こういうときばかりは役に立つ。