さっき先生が、「これは生まれつきの障害だ」と言わなかったか?

何で、そんな差別用語でからかわれなければならない?

すると。

「ちょっと、やめなさいよ」

クラスメイトの女の子が、からかいの声をあげる男子生徒を諌めた。

なんて良い子だと思ったけど、その次の言葉に、私は愕然とした。

「そんなこと言ったら、性同一性障害の人が可哀想でしょ」

…可哀想。

そうか。

私は、普通の人の目から見たら、可哀想な人なのか。

そりゃあそうだよな。

普通は、身体と心は一致しているはずなのに。

それが別々なのだから、確かに可哀想だ。

私は、可哀想な人間なのだ。

その日、私は酷く落ち込んで帰った。

どんな差別用語より、「可哀想」と言われたことがショックだった。

あのときのショックは、未だに忘れられない。

…誰にも話すことは出来ない。そう思った。

ずっと隠しておかなければならないと。

そして私は、女であることを隠したまま、ルティス帝国立、第三帝国騎士官学校に進学した。