…クラスメイトだった。

クラスメイトの、サナキ・エインリー。

な、何故こんなところに。

ちゃんと、学校からは離れた場所に来ているのに。

と言うか、何で私だと分かったんだ。

「ひ、ひと…。人違いじゃありませんか?お、私はエガルテなんて名前じゃ…」

何とか誤魔化そうと試みたのだが。

「いや…どう見てもエガルテだろ?声めちゃくちゃ低いし…」

しまった。

この格好で、喋っちゃいけないんだった。

声で男だってバレてしまう。

どうするんだ。余計に墓穴を掘って。

何でそんな格好してんの?って絶対言われる。

女装趣味なんかあったんだ、って皆に言い触らされる。

それだけは、何としても阻止しなくては。

「…頼む!皆には内緒にしてくれ!」

「は?」

その「は?」は何の「は?」なのか。

「は?そんなの言い触らすに決まってんじゃん」って意味だったら。

俺はこれから先、どうやって生きていけば良いのか。

「頼む。何でもするから…!」

この際、秘密を守ってくれるのなら、現金でも何でも払う。

すると。

「ちょ、ちょっと待って。何の話?」

「な、何のって…。今、クラスでネタにするつもりでしょ?」

「何を?」

「わ、お、俺が女装癖のある変態だって言い触らし…」

「…何だそれは…。しないよ。そんな悪趣味なこと…」

「え?」

…しないの?

思わず、口をぽかんと開けてしまった。