「どうした?大丈夫か。疲れたか?」

「あ…いえ」

次の対戦カードまでの待機時間、私はぼんやりと他ペアの試合を眺めていた。

そこにアトラスさんがやって来て、ドリンクを差し出してくれた。

「ありがとうございます」

有り難く受け取り、ドリンクに口をつけた。

と言っても、私は後ろでサポートしているだけだから、そんなに喉が渇く訳ではないのだが。

「次、勝ったらいよいよ決勝だな」

「そうですね。…正直、ここまで来られるとは思ってませんでした」

「そうか?」

トントン拍子と言うか…あまりにもあっさり過ぎると言うか。

もっと苦戦するものかと。

「俺は勝てると思ってたぞ。シュニィは強いからな。俺達に勝てる奴が、そうそういるもんか」

「全くあなたの自信は…何処から来てるんです?」

どうやったら、そんなに無邪気に勝利を確信出来るのか。

そういうところまで愚直なんだから、あなたは。

「それはシュニィがいるからだ。お前がいてくれたら、勝てない相手なんていないと思ってるよ」

「またあなたという人は、そういうことばかり言って」

「本当のことだからな。何度でも言うさ」

…もう。

信頼してくれているのは分かるし、それは嬉しいけど。

でも、同時に、胸が苦しくもなる。

だって私達がこうして、一緒に戦えるのは、もうこれっきり…。

「決勝まで頑張ろう。俺達なら勝てるぞ、シュニィ」

「…えぇ。そうですね」

「…どうした?本当に…疲れたか?」

「いえ…」

別に、疲れてはいない。

そうじゃなくて。

「…決勝なんて、来なければ良いのに」

「え?」

「そうすれば…あなたとこのまま…」

消え入りそうな声は、アトラスさんには聞こえなかった。

「シュニィ…?」

怪訝そうに私の顔を見つめるアトラスさんを見て、私はハッとした。

私と来たら…何を、馬鹿なことを。

「いえ、何でもありません…大丈夫です」

「そうか?…ドリンク、もっと飲むか?」

「あ、いえ…。もう結構です」

前衛で走り回ってるアトラスさんと違って、私はほとんど動いていないし。

すると。

「なら、残りは俺にくれ」

「え、あ」

アトラスさんは私の手からドリンクのボトルを取り、私が口をつけたところに躊躇いなく口をつけ、ごくごくとドリンクを飲んでいた。

あ…あなたという人は。

「…ん?どうした?」

「…何でもありません」

気にする私が細かい。そうですね。

そういうことにしておきましょう。

本当、この人には振り回されてばかりだ…。

と、思っていると。

「…なぁ、シュニィ」

「はい?」

「今日の試験が終わったら、話したいことがあるんだ。試験が済んだら、いつもの…訓練場まで来てくれないか」

「…?分かりました」

話したいこと?…って?

今、話してくれれば良いのに。

アトラスさんのことだから、きっと、これまでありがとうとか…そういうお話だろうな。

…そうね。

「今は、目の前の試合に集中しよう」

「えぇ。そうですね」

私も、あまりそのことは考えないようにしよう。

考えてしまったら…きっと、何も手につかなくなってしまうから。