──────…目の前の光景が、信じられなかった。
「イレースちゃん!!」
「…う…ぐ…」
咄嗟に女子生徒を庇って、魔力の刃に背中を貫かれたイレースちゃんは、ドサッと床に崩れ落ちた。
慌てて駆け寄ると、彼女は真っ青な顔で私を見上げた。
「シルナ…教官。私…」
「喋らなくて良い。よく、こちら側に戻ってきたね。立派だったよ、イレースちゃん」
土壇場になって、彼女は踏み留まった。
正しい方に、戻ってきたのだ。
「大丈夫だよ。絶対助けるから」
「…良いんです。これは…罰なんです、私の…」
「…罰?」
「生徒に…いっぱい…酷いことして…」
「…」
…成程。
確かに、君を恨んでる生徒は、少なくないのかもしれないね。
だけど。
「…罪というのはね、イレースちゃん」
「…?」
「死んで償うものじゃない。生きてやり直すことだ」
それが、贖罪というものだ。
「大丈夫。私の目の前で、人を死なせはしない。…ねぇ、羽久」
訓練場の外に聞こえるように。
私は、合図の言葉をかけた。
すると。
「…ったく、遅いんだよ馬鹿シルナ!」