「俺の手を取れよ。俺は禍なる者を復活させ、世界を変革させる。あんたと利害が一致してる。そうだろ?」

「…」

結構です、と言いたかった。

確かに世界を変えるのは、私の悲願でもある。

でも、だからと言って禁書の手を取るほど…私は落ちぶれていない。

そのつもりだった。

「…嫌だ、って顔してるな?」

「…それは」

「分かってないなぁ。あんたの今のやり方じゃ、何も変わらないぞ?」

「…!」

痛いところを突かれた。

その通りだったから。

私は非力だった。私の力は、世界を変えるにはあまりにもちっぽけだった。

いくらラミッドフルス魔導学院で、生徒を厳しく育てても。

ルーデュニア聖王国を変えられる訳じゃないし、それどころか聖魔騎士団さえ変えられない。

私には、世界を変えられない。

分かっていたけど、認めたくなかった事実を、目の前に突き付けられた。

「…大好きな両親を殺したような奴らが蔓延る世界を、変えたくないのか?」

私はハッとして、写真の中の両親を見た。

二人が、私に訴えかけているように見えた。

お願いだから、と。

あんな悲劇を繰り返す世の中を変えてくれ、と。

「私は…」

「変えたいんだろ?世界を救いたいんだろ?なら、俺の手を取れ。…俺だけが、あんたの理解者だ」

震える、手で。