でも。

ただ魔導師を目指す少女一人が救えるほど、世界は小さくなかった。

成長するにつれ、私は自分の無力に気づき始めていた。

いや、本当は最初から気づいていたのだ。

でも、認めたくなかった。

自分の無力や、非力を。

それを認めたら、私の志を支える柱が折れてしまいそうで。

いくら勉強しようと。

いくら優秀な魔導師になろうと。

私に、世界は変えられない。

認めたくなくて、認めざるを得ないその現実。

それでも、私は諦めなかった。

一度に全てをひっくり返す必要はない。

少しずつでも、人々の意識を変えていけば良い。

弱者を守り、平等な世界を作る為。

その為に、私は聖魔騎士団に入り、すぐに教員免許を取得して、ラミッドフルス魔導学院に赴任した。

あの当時、ラミッドフルス魔導学院は今ほど厳しい学校ではなかった。

イーニシュフェルト魔導学院に比べれば、多少きつくはあったものの。

そのラミッドフルス魔導学院を、私は時間をかけて、徹底的に改造した。

校則を厳しくし、試験での退学制度を作った。

勿論一筋縄では行かなかったし、時間もかかった。

しかし、私は諦めずに取り組み続けた。

その結果、ラミッドフルス魔導学院は今の姿を手に入れた。

私の目的は、強い魔導師を作ることだ。

弱者を守り、正しい行いをして、国と民と女王陛下を誇り高く守る魔導師。

その為には、体罰も厭わなかった。

むしろ、己が身を以て痛みを知らなければ、他人の痛みは分からない。

この調子で、少しずつ私の理想とする魔導師を増やしていく。

そうすれば、おのずと世界は形を変えてくるだろう。











…そう思っていた矢先だった。

彼が、私のもとにやって来たのは。