俗に言う、通り魔、だった。

「遊園地になんか来て、幸せそうに笑ってる奴らに腹が立った」

犯人は、取り調べでそう語ったそうだ。

おまけに、犯人は精神に疾患があったそうで、罪には問われなかった。

私の両親の他に、犯人は他にも何人も刺していたが、死んだのは私の両親だけだった。

私は両親が庇ってくれたお陰で、怪我一つなかった。

でも、心の傷は深かった。

両親が目の前で、自分を庇って殺されるところを見てしまったのだ。

幸せだったのに。

その幸せが、一気に絶望の底に叩き落とされた。

どうして?

どうして私なの?

どうしてお父さんとお母さんが死ななきゃならなかったの?

どうして犯人は罰されないの?

どうして私はこんなに不幸なのに、世界は何も変わらずに回ってるの?

どうして私以外の人は、変わらず幸せそうな顔をして生きてるの?

どうして笑ってるの?

ここに…こんなに苦しんでる人がいるのに。

…不平等だ。

あまりにも不平等だ。

幸せな人がいて、不幸せな人がいる。

強い人がいて、弱い人がいる。

守られてる人がいて、守られない人がいる。

こんな不平等が、どうして許されるのだろう。

「…変えなければ」

私は、事件の後入れられた病院のベッドの上で、そう呟いた。

「世界を変えなければ…。弱い人を守る世界…。平等な世界に…」

血にまみれた、お人形を抱いて。