私の両親は、魔導師ではなかった。

それなのに、私には子供の頃から、魔導適性があった。

父曰く、父の遠い親戚に魔導師の叔母がいるから、そこから受け継いだのだろう。

魔導適性があろうと、なかろうと、両親には関係なかった。

二人は、一人娘の私をとても大切にしてくれた。

両親が魔導師ではなかったことから、私は魔導適性があったにも関わらず、魔法にあまり興味がなかった。

両親は、「魔導師になりたかったら、魔導師養成学校に行けば良いよ」と言ってくれたが。

魔導師になるつもりのなかった私は、普通の学校に進学した。

あんな事件が起きなければ、私は今でも、魔導師とは何の関係もない生活をしていただろう。

運命のその日は、私の10回目の誕生日だった。

毎年両親は、私の誕生日を盛大にお祝いしてくれた。

そして今年は、記念すべき10回目の誕生日ということで、両親は私に、「何が欲しいか」と尋ねた。

「何でもしてあげるから」と。

私は、「新しいお人形が欲しい」と答えた。

それから、「遊園地に行きたい」とも。

なんとも贅沢な誕生日だが、娘に甘い両親は、喜んで承諾してくれた。

そして私はその日、買ってもらったばかりの新しいお人形を抱いて、両親と三人で、遊園地に行った。

今でも覚えている。

余所行きのピンク色のワンピースを着て、母に髪を綺麗に結ってもらって。

可愛らしいお人形を抱いて、両親に連れ添われて笑顔で遊園地を歩く、幼い私の姿。

何処から見ても、幸せな子供だった。

幸せだった。

幸せだったのに。

その幸せは、突如として奪われた。




最後に観覧車に乗ろう、と観覧車に向かって歩いていた私達の耳に。

突如として、甲高い悲鳴と金切声が聞こえた。

びっくりして振り返ったときには、全てが遅かった。

発狂した男が包丁を突き出した瞬間、私の目の前に父が飛び出し。

母が、私を守るように抱き締めた。

両親の血飛沫が、私の顔に振りかかった。

あの瞬間。

私の幸せは、終わった。