訓練場の中には、15人の生徒が両手を縛られて座らされていた。

見たところ、怪我をしている様子はない。

それほど、手荒な扱いを受けている訳ではなさそうだ。

まずはホッとした。

そして、気になるのは。

「…イレースちゃん、その人は誰?」

生徒でもない、教師でもないもう一人。

イレースちゃんの隣に立っている男は、誰なのか。

「この者が誰なのかは、あなたが一番よく分かっているはずでは?」

「…そうだね」

まさか、こんなに近くにいたとはね。

ずっと気配を隠していたらしい。

「シュニィちゃんが知ったら、驚くだろうね。まさか探し物がこんなに近くにいたなんて」

『禁忌の黒魔導書』の化身。

もう六冊目になるかな。

「イーニシュフェルトの聖賢者…。まんまと釣られたな。イレースの言う通り、甘い男だ」

「何で君が、イレースちゃんの傍にいるの?」

「言わずとも分かるだろう。俺は、この女と契約した」

…契約。

イレースちゃんが、『禁忌の黒魔導書』と契約したと言うのか。

「…イレースちゃん。本当なの?」

「えぇ、勿論」

躊躇うことなく、彼女は頷いた。

…そうか。

「…それで君は、何でこんなことをしてるの?」

私は、それを聞きに来たのだ。

「…シルナ・エインリー教官。今すぐ、あなたに死んでもらいたいんです」

…予想はしていたから、そんなには驚かなかった。

私に死んでもらいたい人は、多分いくらでもいるだろう。