これ以上話していても、シルナ・エインリーとは絶対に分かり合えない。

「…そろそろ失礼しても宜しいですか」

「…そうだね。ごめんね、遅くに。お休みなさい」

諦めたような顔で立ち去るシルナ・エインリー教官を見送り。

私は、部屋の扉を閉めた。

…本当に、甘い男だ。

「…あんな男だったとは。幻滅も良いところです」

このままシルナ・エインリーがイーニシュフェルト魔導学院の学院長を務めていたら、聖魔騎士団はどんどん堕落していくだろう。

すると。

「…期待外れだったか?」

部屋の壁に凭れて、両腕を組んだ男…私の唯一の理解者…が、口許を歪ませながらそう尋ねた。

「…えぇ。期待外れです」

「なら、やはり俺達がやるしかないようだな」

「…そうですね」

伝説の魔導師であるシルナ・エインリーなら、私の考えを理解出来ると思っていた。

でも、あの男では駄目だ。

私の力には成り得ない。

なら、私がやるしかない。

私の唯一の理解者と共に…。

「…あなたの力を借ります。ヴォイド…」

「あぁ、俺もそのつもりだよ。…イレース」

人を、国を、世界を、私が救う。

その為なら、私自身がどうなっても構わない。