それを聞いたとき、私は「何様のつもりだ」と思った。

余計なお世話だ。

ラミッドフルス魔導学院には、ラミッドフルス魔導学院のやり方が。

私には、私のやり方がある。

何故、合宿で一緒になっただけの他校の教師に、口を出されなければならないのだ。

「それに、聞くところによると君は…少し前の試験のときに、20人もの生徒を不合格にしたそうだね?」

…何で、そんなことまで知ってるのか。

「…よくご存知で」

「不合格にするということが、彼らを学校から放り出す行為だと分かっていて、そうしたんだよね?」

「勿論です」

ラミッドフルス魔導学院の生徒として相応しくない。そう判断したからこそ、彼らを不合格にした。

そしてラミッドフルス魔導学院では、試験の不合格は、即退学を意味する。

当然、私はそのことをよく知っている。

他でもない私が、試験監督だったのだから。

「悪いけど、同じ教師として、理解出来ない行為だ」

「理解してもらう必要はありません。ラミッドフルス魔導学院は、イーニシュフェルト魔導学院とは違いますから」

試験でどれだけ酷い結果を出そうと。

魔導師としておよそ相応しくない生徒だろうと、入学さえすれば、卒業まで面倒を見る甘ちゃんのイーニシュフェルト魔導学院とは違う。

たかだか学校での生存競争に負けるような落ちこぼれは、魔導師に相応しくない。

人々の命を守る魔導師は、もっと気高い存在でなくてはならないのだ。

「退学した彼らが、どんなに傷つくか。どんなに人生を狂わされるか、考えたことはある?」

「ありません。それを考えるのは私の仕事ではありませんから」

「…」

「シルナ・エインリー教官。あなたは甘過ぎる。そんな甘い教育方針では、聖魔騎士団は軟弱者の集団になってしまう」

国を守るべき聖魔騎士団が、軟弱者と集団に成り果てたら。

誰が、この国を守るのか。

私は教育者として、それだけは絶対に阻止しなくてはならないと思ったのだ。

「だから、暴力を許容すると?」

「魔法とは即ち暴力です。痛みを知らぬ者に、魔法は使えません」

「…君のそれは、痛みを伴わないただの暴力だよ。ただ身体が痛むだけで、心には響かない。無意味だよ」

そうなのかもしれない。

でも、優しく教え導くのか教育だと思っているこの人には、絶対に理解出来ない。

「…私は、間違ってない」

今も何処かで泣いているであろう、弱き者を救う。

その為に、魔導師は誰よりも強くあらねばならないのだ。