これまでの試験では、私は少しも緊張することはなかった。

皆の前で見られながら魔法を使わされて、面倒だなぁと思うくらい。

どうせ一回戦か二回戦で敗退するのだから、期待しないのは当然だ。

しかし、今回は違う。

優勝とまでは行かずとも、ベスト8には食い込みたいところ。

最低でもベスト16まで行けたら良いんだけどな…と。

私はそう考えていたのだが。

アトラスさんは、

「シュニィ。頑張って優勝しような!」

優勝する気、満々である。

志が高いのは良いことだと思うけれど…でも。

高過ぎるのは、逆に良くないのでは?

「アトラスさん…。目標が高過ぎませんか?」

「高いことはないだろう。俺と、シュニィの魔法があれば、優勝だって夢じゃない。俺はそう確信してるぞ」

全く、この人の根拠のない自信は、一体何処に源泉があるのか。

一回戦も勝てないかもしれない…なんて鬱々としてるよりは良いけど。

「大丈夫だ、俺達なら勝てるぞ」

「はいはい。分かりました、優勝ですね」

「あぁ!優勝だ」

剣を握り締めて意気込むアトラスさん。

全く…子供みたいなんだから。

まぁ…でも。

この人と優勝出来たら、きっと嬉しいだろうな。

一生の思い出になることだろう。

「頑張ろうな、シュニィ!」

「えぇ。頑張りましょう」

私も、珍しく。

本気というものを出して、この人に背中を預け、この人の背中を預かってみようと思った。