「…大丈夫?立てる?」

イレースちゃんが去るなり、私は頬を腫らした女子生徒に手を差し伸べた。

「は、はい…」

「痛むかい?」

「大丈夫です…。初めてじゃ…ありませんから」

…。

「それより…その、ごめんなさい…。私のせいで…クローリア教官と…」

自分のせいで、私とイレースちゃんが喧嘩したことを気にしているらしく。

その女子生徒は、戸惑いながら謝ってきた。

「まさか。君のせいじゃないよ。気にしなくて良いからね」

これは、私とイレースちゃんの問題だ。

断じて、この子は関係ない。

「後で、もう一度彼女と話してみるよ。大丈夫、気にせず合宿に集中してね」

「はい…」

「今日はもう、部屋に帰って休んで良いから」

「いえ…。大丈夫なので、このまま実習を続けます」

さすが、ラミッドフルス魔導学院の生徒。

上昇思考が高い。

「分かった。でも無理しないでね」

「はい」

皆の前で、あんなに派手に殴られたのに。

女子生徒は、もう平然としていた。

普通なら、もっと狼狽えたり、泣き出してもおかしくないはずだった。

…本当に、ラミッドフルス魔導学院の生徒は、あのイレースちゃんに体罰を受けることが、日常なんだな。

でなくては、こんなに平然としていられるはずがない。

イレース・クローリアは「そういう」教師だと、皆知っているのだ。

知っていて、誰も、他の教師達も見過ごしているのは…イレースちゃん自身が言う通り、彼女が教師として、それなりの実績を残しているからだろう。

やり方がどうあれ、彼女がその方法で上手く行ってることには変わりないのだ。