我ながら、冷たく言ってしまったが。

案の定イレースちゃんは、気を悪くしたらしく。

「…お言葉ですが、シルナ・エインリー教官。私は、教師としてラミッドフルス魔導学院で、このような教育方針で生徒を育ててきました。それなりの結果も出しているつもりです」

そうだね。

ラミッドフルス魔導学院からは、毎年たくさんの優秀な卒業生が、聖魔騎士団魔導部隊に入っている。

彼らの活躍は、私も知っているところだ。

そんな彼らを育てたのがイレースちゃんだと言うなら、確かに彼女のやり方は間違っていないのかもしれない。

私が生徒に、甘過ぎる節があるのも知ってる。

よく羽久に言われるから。

でも、それを差し引いても。

「絶対にやってはいけないことだよ。暴力だけは」

「意味が分かりません。私はこのやり方で結果を出しています。何故それを変えなければならないのですか」

「君の言ってることは、『欲しいものがあるんなら、万引きすれば良いじゃないか』って言ってるのと同じ次元なんだよ。結果を出す為なら体罰でも良いじゃないか、ってね。結果を出す為なら何をやっても良いの?」

まず手段として成立してないんだよ。

いくら欲しいものがあるからって、盗むなんて選択肢に入らないだろう。

それと同じだ。

「殴って、叩いて、言うこと聞かせて、それは教育じゃない。ただの暴力だ」

「ただの暴力でも構いません。それで生徒が成長するなら」

「なら君はもう、教師を名乗る資格はない。ただ権力を笠に着て、子供達を殴る犯罪者でしかない」

きっぱりとそう言うと、イレースちゃんは眉をひそめた。

「…言葉が過ぎるのではありませんか。私は教師です」

「いいや、私は君を教師とは認めない。体罰をやめない限りは」

それだけは、決して譲らない。

私にも、教師としてのプライドがある。

「…そうですか。なら、認めてもらわなくて結構です」

「…あくまで、方針を変えるつもりはないんだね」

「ありません。私は私のやり方で生徒を教えます。口出しされる謂れはありませんから」

…そう。

随分と頑なだね。

そこまで言われたら、私も言い返すことが出来ないけど…。

彼女を教師として認めないと言った、その言葉は取り消すつもりはない。

イレースちゃんは、年上の私にも臆することなく一瞥をくれ。

そして、黙って立ち去った。