「…今日も厳しかったな、クローリア教官」

「あぁ…」

授業の後、生徒達は教官が去るなり、口々にそう呟いた。

「いくらなんでも、厳し過ぎるよ」

「鬼だよな、あの人」

「この間の試験だって、あんなに厳しく採点して…」

「俺も結構危なかったよ」

「ほら、大丈夫か?立てるか?」

生徒の一人が、先程教官に蹴飛ばされた生徒に手を差し伸べた。

よろよろとしながらも、倒れた生徒はその手を掴み、立ち上がったが。

まだふらつきが残るようで、足元は覚束なかった。

泣き腫らした目は真っ赤になり、涙の跡が頬に残っていた。

十六歳という、子供にしては大きい年齢の少年が、恥も外聞もなく人前で泣きじゃくる様を、みっともないと思う者がいるかもしれない。

でも、この場所には、少年を笑う者はいなかった。

皆、明日は我が身だからである。

「クローリア教官、噂には聞いてたけど、いくらなんでも厳し過ぎるよ」

「そうだよ。いくらここが、ラミッドフルス魔導学院と言っても…」

生徒達は、同情し合うようにそう言った。