その日の夜。

私と二十音は、別々のベッドで寝ていた。

…はず、だったのだが。

「…!?」

夜中にふと目を覚ますと、私の横に、二十音がいた。

びっくりして、心臓が口から飛び出るかと思った。

何でここにいるんだ。

向こうのベッドで寝ていたはずじゃないか。

しかも、あろうことか。

二十音は、私の片手をぎゅっと握ったまま寝ていた。

何を…。

二十音の意図が分からず、私はこの子が何かを企んでいるのかと思った。

とにかく。

「…起きなさい」

私は二十音を揺り起こした。

ぱちりと目を開けた二十音は、目の前に私がいるのを見て、ほにゃんと嬉しそうな顔をした。

何がしたいんだ、この子は…。

「勝手に私のベッドに入るんじゃない。自分のベッドに戻りなさい」

「…」

険しい声で指示すると、二十音はショックを受けたように固まった。

「勝手に手まで繋いで…。全く」

ぎゅっと握られていた手も、私は乱暴に振り払った。

すると、二十音は更に悲しそうな顔になった。

振り払われた片手を、もう片方の手でぎゅっと握っていた。

まるで、誰かの手の温もりを確かめるように。

今こんなことを思い出すと、私は気が狂いそうになる。

二十音に、なんて可哀想なことをしてしまったのだ、と。

でも当時の私には、二十音が何故そんなことをするのか、分からなかったのだ。

「ほら、早く自分のベッドに戻りなさい」

「…」

二十音はしばし私の顔をすがるように見つめて。

それから、のろのろと私のベッドから降りた。

全く…。何を考えているのだか…。

私は二十音に背を向けるようにして、再び目を閉じた。