それから私は、二十音と共に各地を旅した。

その間、私は二十音に、ありとあらゆる教育を施した。

二十音は私にとって、人生で一番目の教え子なのである。

あの頃の私は、将来自分が教育者になるとは思っていなかった。

二十音は、ずっと座敷牢に閉じ込められていたにも関わらず、教えた知識を次々に吸収していった。

特に時魔法の成長は顕著で、時魔法にのみ関して言えば、このぶんではあっという間に、私の技術を越えてしまいそうだった。

喜ばしいことなのかもしれないが、私を越えてしまうのは少々厄介だ。

別に、嫉妬している訳ではない。

私は生まれてこの方、他人に嫉妬などしたことがない。

それより、私を越えてしまえば、私が二十音を制御しづらくなるのが心配だった。

この子は、私がいなければ生きられない、私に絶対服従する人間として、洗脳しなくてはならないのだ。

そう、私は二十音に、洗脳教育を施していた。

絶対に私に逆らわないように。

絶対に私の言うことを聞くように。

そうでなければ、器として選んだ意味がない。

制御出来ない器など、欠陥品でしかない。

その点、この子がまともな教育を受けていないのは役に立った。

元々他人に逆らうことを知らないから、操りやすかった。

だからこそ、私は遠慮なくこの子の中に、私の存在を刻み込むように洗脳した。

優しく教え導く、なんてことはしていない。

時には暴力的なまでに…厳しく、強引な洗脳を施した。

しかし。

二十音は、私の思い通りに洗脳されてはくれなかった。