連れていかれたのは、陽の光の届かない、暗く、冷たい座敷牢だった。

上の居間で、『鬼の忌み子』の両親にも会ったが。

彼らは、化け物である我が子に、酷く冷徹だった。

「あの鬼子を何とかしてくれるのかい」

母親は吐き捨てるようにそう言った。

親でさえ、鬼子と思っているようだ。

座敷牢に入るには、物置の床板を外し、そこから梯子を使って地下に降りなければならなかった。

食べなくても死なない身体なので、食事すら与えていないらしい。

それどころか、水の一滴も与えていないとか。

それでも死なないのだから、確かに化け物と言えるのかもしれない。

だが、それを言うなら、私も同じだ。

地下に足を踏み入れると、ぞっとするような光景が広がっていた。

辺り一面埃まみれ、荒れ放題だった。

何より、地上とは違う、地下特有の異様な雰囲気が広がっていた。

正気の人間がこんなところに来れば、ものの数分で気が狂うだろう。

それほどに、異様な空間だった。

その空間の一番奥に、分厚い鉄格子があった。

鉄格子の向こうに、何かがいた。

「…君が、鬼子?」

「…」

誰一人、実の親でさえ近づかない、この座敷牢に。

その鉄格子の前に、私は躊躇いなく歩みを進めた。

近寄ってみてから、その鉄格子の向こうに、生き物がいることが分かった。

埃と垢にまみれた髪。

涙の痕が残る頬。

あどけない、疑うことを知らない無垢な瞳。

そして。

「…私が、君を助けてあげよう」




鉄格子の中に、私が差し出した手。

鉄格子の向こうから、鬼が伸ばした手。

その手が触れ合ったとき。