「…」

「…」

神と、それに殉ずる者の間に、緊張が走った。

…私でなかったら、あまりの恐ろしさに卒倒していただろうな。

だが、私だって並みの覚悟で…神に逆らっている訳ではないのだ。

「…何故？」

「…この子を生かすことが、私の生きる理由だから」

「神を殺すこと以外に、お前に生きる理由があると？」

…ないね。

なかったはずなんだけど。

「あります。今では…この子を守ることが、私の生きる意味です」

「イーニシュフェルトの聖賢者であるお前が？」

「…イーニシュフェルトの聖賢者である私が、です」

「…それは有り得ない」

…有り得ない…か。

自分でもそう思う。

「神を殺す役目を果たさないなら、お前を生かす為に死んだ者達に、何と言う？どう顔向けする」

それは…私も日夜考えていることだ。

…どう考えても、彼らに向ける顔なんてないよな。

それは分かってる。

分かってるけど。

…理性でどうにか出来るものなら、とっくにしてる。

「彼らがどう思おうと、どれだけ私を憎もうと…それでも私は、この子を守る。あなたと対を為す、あなたの宿敵。かつて世界を滅ぼした禍なる者の、移し身であるこの子を…！」

もし、神祖が私の生きる理由を奪うなら。

羽久の…いや、二十音の命を奪うなら。

私は喜んで、神殺しの罪さえも…この身に背負おう。