「人間として…か。物好きな神だ」

「…ごめんね」

「謝る必要はない。我らの主を…禍なる者を復活させる為、お前の力を利用しようと思っていたが…それが叶わないのなら、仕方ない」

…そう。

やっぱり、その為だったんだ。

「…諦めてくれるの?」

もしそうなら、これ以上はない。

私は今すぐここを出て、また人間に戻ろう。

収容所に入れられても構わない。

いつか、あの化け物が再び私の目の前に現れるまでは。

私は、人間として生きる。

しかし。

「いいや。利用出来ないのなら、お前の存在は脅威以外の何者でもない」

「…」

「故に、今ここで殺す」

「…そっか」

やっぱりそうなるよね。

ヘルヘイムから、爆発的な魔力が膨れ上がった。

…怖いね。

さすが『禁忌の黒魔導書』だ。

知らないけど。そんな本。

「死ね。神祖の移し身」

「…そんな名前で呼ばないで」

ヘルヘイムが振りかざした魔力の刃を、私は片手で受け止めた。

「私には、ベリクリーデって名前があるの」

「…っ!?」

「…さよなら。叔母さん」

こんな結果になったのは、残念だけど。

でも、仕掛けてきたのはあなただから。

「…私が殺したいのはあなたじゃない。でも…あなたがアレを復活させようとするなら…あなたは、私の敵だ」

私はその瞬間に、「入れ替わった」。

私の中にいる、もう一人と。

私の手から放たれた真っ白な魔力が、ヘルヘイムの胸に風穴を開けた。