そして、もう一つ。

私には、気になっていることがある。

これを指摘するつもりはなかったのだが。

私の、夢が。

それを許さなかった。













「…ここでの生活は、もう慣れた?」

ある日の午後、叔母は私をお茶に呼び出して、そう尋ねた。

私には、このお茶がただ熱いだけの苦い水にしか見えない。

あまり美味しくはないが、叔母は平然と飲んでいるので、多分平然と飲むのが正しいのだろう。

それはともかく。

慣れたか…だって?

「いえ…。まだ…戸惑うことの方が多いです」

正直に答えてしまった。

多分、あと一年たっても慣れないだろう。

それだけ、私に染み付いた収容所暮らしは消えないということだ。

「そう…。無理もないわね。長く一人でいたんだし…」

「…」

「すぐに慣れる必要はないわ。少しずつ慣れれば良いのよ」

ヘイリー叔母は、にこりと笑った。

本当に、良い人だ。

良い人過ぎて、言えないけれど…。

でも、言わない訳にはいかない。

「…あの、叔母さん」

「何?」

「ずっと聞きたかったことがあるんです」

「…?良いわよ。なぁに?」

…これを聞いてしまったら、私は叔母と前のような関係にはなれないだろう。

全てが崩れようとしているのに。

私の中のもう一人が、それを止められなかった。

「あなた、私の叔母さんじゃないでしょう?」