「アルデン人だから何だって言うんだ?俺は何度もシュニィに触ったし、シュニィと話したぞ!なのにどうにもなってない!言い掛かりなんだ。ちょっと、あいつらに文句言ってくる!」

「え、ちょっ…アトラスさん!?」

彼はずんずんと大股に歩き出し、先程私の顔を見て逃げていった女の子達を追いかけた。

元々破天荒な人だったが、まさかここまでとは思わず。

私はしばし呆然として、それから慌てて後を追った。

しかし。

「お前達!何でシュニィを避けるんだ。シュニィは何も悪いことはしてない、ただの普通の女の子だろう!」

こ…この人一体、何を言ってるの。

あの女の子達も、そう思ったことだろう。

「アルデン人の呪いだと?馬鹿馬鹿しい。そんなものがあるか!人種差別だぞ!シュニィの生まれや人種がどうであれ、彼女が優しくて、賢くて、立派な魔導師であることに変わりはないだろう!それを何だ、あの態度…!失礼だろうが!」

初対面で頭ごなしに説教かますのも、相当失礼だと思うが。

とても突っ込める空気ではなかった。

誰が優しくて賢い立派な魔導師だって?

話を盛り過ぎだ。

「彼女は俺の大事な相棒なんだ。今度あんなことしたら、ただじゃおかないからな!」

女の子達は、多分一年生とか、二年生だったのだろう。

いきなり大柄な先輩に怒られたものだから、可哀想に、二人共怯えきった顔をして、震えながら逃げていった。

なんてことを…。

「全く…。失礼極まりない奴らだ」

けしからん、と怒り顔のアトラスさん。

…あなたも、大概ですよ。

「何を言ってるんです…あなたは…」

「何って、何が?」

「あの人達をあんな風に怒らなくても。私は慣れてるんですから…」

「お前が慣れていても、俺は慣れない。シュニィを馬鹿にされるのは耐えられない」

…。

馬鹿にされるのが耐えられないって…何でアトラスさんが?

「人種が何だろうと、シュニィはシュニィだ。俺達と同じ人間だ。強くて賢くて、優しくて…立派な魔導師だ。恥じることなんて、何もないだろう」

「アトラスさん…」

…強くて賢くて、辺りの部分は賛同しかねるけど。

そんな風に言ってくれた人は…学院長を入れて、二人目だ。

学院長だけが、とんでもない変わり者なのだろうと思っていたけど…。

…ここにももう一人、変わり者。

「…皆があなたみたいだったら、私…もっと、楽に生きられたんでしょうね」

「…シュニィ?」

「私、ずっとこの髪のせいで…。皆に嫌われて…親にも捨てられて…」

言わなきゃ良いのに、こんなこと。

でも何故だろう。彼の前だと、どうしても。

私の心の弱い部分を、さらけ出したくなってしまう。