食事の後。

ようやく我に返った私は、醜く食い散らかされたテーブルを見下ろした。

お皿の上には、もう食べ物は残っていなかった。

私が、全部食べ尽くしてしまったからだ。

お皿まで綺麗に舐められて、皿洗いの必要がないほど綺麗になっていた。

なんて卑しいことをしてしまったのだろうと思ったが、叔母さんはそんな私を責めなかった。

「お腹一杯になった?まだ用意させましょうか?」

「…いえ、もう…結構です」

我に返って初めて、私は自分が満腹感に襲われていることに気づいた。

覚えている限り、初めてのような気がした。

そして、満腹感を感じるとすぐに、強烈な疲労と眠気が襲ってきた。

ふらりと倒れそうになる私に、叔母さんが言った。

「部屋に案内するから、少し休むと良いわ」

「…はい…」

返事もそこそこに、私は用意された寝室に連れていかれた。

びっくりするくらい広くて、清潔な部屋だった。

ムシロを敷いただけの、硬い床で寝ていた身に、ふかふかの大きなベッドは、逆に身体が痛くなりそうだった。

まるで、夢みたいだった。

全てが夢のように思えた。

こんなに清潔で、こんなにお腹が一杯で、こんなに柔らかな寝床で寝て。

もしかして私は、走馬灯の中にいるのではないか、と思った。

本当は収容所で死にかけていて、死の間際に、幻覚を見ているだけなのではないか、と。

それなら、それでも良い。

死ぬ前にこんなに幸せな夢を見られるなら、もし目を覚まして絶望することになっても構わない。

そう思いながら、私は目を閉じた。

眠ると、私は夢を見た。

また、同じ夢だった。