新しい家に着くなり。

私は、まず身体を洗われた。

私をまるまる洗濯機に放り投げて洗濯すれば、手っ取り早かったのだろうが。そうも行かず。

見たこともないくらい広くて、綺麗なお風呂に入れられた。

収容所の、カビの生えた、配管が剥き出しの汚いシャワー室しか知らない私にとっては、異世界の浴室だった。

私の汚い身体を擦ると、何年分かの垢が、べりべりと剥がれていった。

いつも使っていた、固くて、擦るとぼろぼろに崩れてしまう石鹸ではなくて。

擦れば擦るほどに泡が立ち、おまけに良い匂いがする石鹸を使わせてもらった。

髪を洗ってとかし、乾かすと、髪の色がツートーンくらい明るくなった。

こんなに汚れていたのか、と我ながらびっくりするくらいだった。

お風呂を出た後、当たり前のように囚人服に手を伸ばそうとした私に、使用人が慌てて、叔母さんが用意してくれた新しい服を差し出した。

汚れてもいない、使い古しでもない新品の服を着るのは、久し振りのことで。

それどころか、囚人服以外のものを着るのが、あまりにも久し振り過ぎて。

どうにも着心地が悪い、なんて思ってしまった。

奴隷根性ならぬ、囚人根性が骨の髄まで染み込んでいるようだ。

お風呂から上がって、生まれ変わったような姿で、今度はダイニングルームに連れていかれた。

そこには、叔母さんがテーブルについて、既に待っていた。

「あぁ、綺麗になったわね。良かった」

叔母さんは、清潔そのものの姿になった私を見て、にこりとして言った。

先程までの私は、よっぽど酷かったんだろうな。

「さぁ、お腹が空いてるでしょう。食事にしましょう」

…食事?

言われてから、初めて思い出した。

そういえば私、朝食前に呼び出されたから、まだ朝から何も食べてないんだった。