「生徒の手作りチョコ…。美味しいなぁ」

「…」

…やっぱり警察呼ぼうかな。

犯罪の臭いしかしない。

「羽久も食べようよ」

「…呑気な奴だな」

…とは、言うものの。

実は職員室の俺の席にも、生徒からのチョコレートがいくつも置いてあったのである。

誰が置いていったのかは知らないが…。

もらってしまったものは、どうしようもない。

そもそも俺は時魔法の教師であって、生活指導はシルナの仕事なのだ。

「全く…」

こんな甘いことで大丈夫なのか、と思った。

そのとき。

「こんにちは、学院長先生。羽久さん」

「あ、シュニィちゃん」

毎度お馴染み、聖魔騎士団魔導部隊隊長のシュニィが、学院長室を訪ねてきた。

「やぁ、シュニィちゃん丁度良かった。チョコレートあげるよ。はい」

シルナは嬉しそうにチョコレートを差し出した。

何で誰にでもチョコあげたがるんだ?この人。

サンタクロースか何か?

「あ…ありがとうございます」

「こっちはアトラス君にね。あと、こっちはアイナちゃんに」

一家全員に渡すな。

「ありがとうございます。それとこれ…一応私からも」

と思ったら、シュニィまで俺とシルナにチョコをくれた。

おいおい。

一瞬にして、シルナの周りにお花畑が広がった。

誰からでもチョコレートをもらえたら、とにかく嬉しくて仕方ないらしい。

何歳だ、お前は。

「ありがとうシュニィちゃん」

「ありがとう」

一応、俺も礼を言う。

シュニィからの善意であることには変わりないからだ。

「いえ、ほんの気持ちですから」

にこり、と微笑むシュニィ。

シュニィの本命は間違いなくアトラスだから、俺達はお裾分けだろうけど。

お裾分けでも充分である。