「うふふ。良いねぇバレンタインって。なんて素敵な文化なんだろう。嬉しいなぁ」

シルナは、女子生徒数十名からもらったというチョコレートを、大事そうに抱えてほくほくしていた。

女子生徒からチョコもらって喜ぶ学院長。

うん。最高にキモいぞ。

なんかそれとなく犯罪臭がするから、ちょっと警察呼んできて良いかな。

「わ~見て。チョコだね~。美味しそう。皆頑張って作ってくれたんだなぁ」

喜んでるところ悪いけどさ。

多分、シルナの為に作ったんじゃないと思うよ。

他の本命のついでに、シルナにお裾分けしてくれただけだろ。

自惚れるなおっさん。

おのれが相手にされると思うなよ。その顔面で。

「…ねぇ、羽久」

「あ?」

「今、私に失礼なこと考えてるでしょ」

「よく分かったな。その通りだ」

失礼じゃないよ。

事実だよ。

「大体、何で学校に菓子持ち込んでるんだよ。学院長なら叱れよ」

「え?良いじゃないバレンタインなんだから」

学院長が、率先してバレンタインを満喫するな。

どうなってるんだイーニシュフェルトの校則は。

「私もねぇ、バレンタイン楽しみだったから。皆に事前に、『バレンタイン当日は皆にチョコ配るね』って言って、今日皆に二つずつ、ちっちゃいミニチョコ配ったんだよ。皆食べてくれたかな~」

それどころか、学院長が率先してお菓子を配っていた。

そういえばこの学院長、暇さえあれば学院長室で菓子を貪り食ってるんだった。

それだけならまだしも、学院長室を訪ねてきた生徒に、チョコやクッキーをあげてるんだった。

学院長としてどうなの?それ。

生徒の手本となるべき教師が、それで良いのか。

で、学院長であるシルナが率先してチョコを配るものだから、生徒も嬉々としてチョコを持ってきて、あろうことかそれをシルナにもお裾分けするのだ。

お陰で、シルナは累計数十個…多分30個くらいはある…チョコをもらっている訳だ。

学院長としてどうなの?それ。

良い歳したおっさんが、チョコレートで喜ぶな。