シェルドニア王国には、時代錯誤な公開処刑の制度がある。

当然、収容所にも当てはまる。

公開処刑は、収容所では日常的なイベントだった。

公開処刑に処されるのは、主に脱走を企てた者、監視員に暴力を振るった者、収容所で人を殺した者、そして常習的に盗みを働いた者などだった。

彼らが殺される様を、私達はまるで見世物のように眺めた。

死刑囚は口にぼろ布を詰められ、声を出せないようにされ、両手両足を縛られる。

そして、皆の見守る前で、処刑執行人が死刑囚の罪状を声高に読み上げる。

「この非国民は、国王様の温情を無下にして云々、よって死を以て償わせる云々」と。

罪状を読み上げた後に、死刑囚の足元に火をつける。

処刑の方法は、大抵火炙りだった。

私達は、生きた人間が焼かれて死んでいく様を、最初から最後まで見つめていなければならないのだ。

最初に見たときは、それこそ吐き気を催した。

あまりの悲惨な光景に、意識を失う人もいた。

けれど、私はそれさえも慣れてしまった。

今ではもう、誰が殺されようとも、心が揺り動かされることはなかった。

あぁ、また悪さをした人が出たんだ、と思うくらい。

それどころか、私は心の底で、公開処刑を歓迎していた。

人が殺されるのを見るのは日常茶飯事だったし、それに何より、公開処刑の間は、辛い労働に従事しなくて良い。

ただ眺めているだけで何もしなくて良いのだから、楽なものだ。

「公開処刑が行われるから、作業を中断して広場に来い」と言われたら、ほっとする自分がいた。

私だけに限らず、収容所に長くいる者は、皆そうだった。

心が凍てつき、人としての最低限の感情さえ、殺されてしまっているのだ。

心を殺さなければ、ここでは生きていけない。

心を殺せなかった者は、自殺するしかなかった。

収容所では、自殺者が後を絶たなかった。

首を吊る者、ナイフで首を切り裂く者、自ら毒を飲む者…。

自分がこんな、非人道的な場所に生きていることに耐えられなかったのだろう。

私は、いくら辛くても、自殺をしようとは思わなかった。

死にたいと思ったことがない訳ではない。

でも、死ぬよりは生きていた方がマシだ。

こんな悪魔みたいな施設で、殺されたくはなかった。