「それで、その…シュニィちゃん。今日はどうしたの…?」

私は焦りを隠しながら、シュニィちゃんに尋ねた。

すると。

「あ、はい…。実は、学院長と羽久さんにお客様が来てて…」

「客…?」

って、誰なんだろうと思ったら。

シュニィちゃんの後ろから、久し振りの顔が現れた。

「よ。約束通り来たぞ」

「あっ…。ジュリス君」

羽久がサナキだったときに世話になった、ジュリス君であった。

うわー…。もう随分昔のことのように思う。

「ジュリス君、君…。『オプスキュリテ』は?もう良いの?」

彼は人間に紛れて、地下組織を運営していたはず。

ルーデュニアに来て、大丈夫なのか?

「心配しなくても、人間としての一生は終えてきたよ」

あ…そうか。

ジュリス君がいた時空とは、時間の流れが違うから…。

こちらではまだ一年もたっていないけれど、向こうでは既に何十年、何百年とたっているのだろう。

「今後は、あんたらに協力してやるよ。久々に魔導師として生きるのも悪くない」

「ジュリス君…」

なんて頼もしい。

彼ほどの魔導師が来てくれたら、聖魔騎士団はますます安泰…。

「…で?羽久は?」

「あ、うん…。ここにいるけど…」

私は、膝の上の羽久…じゃなくて、二十音を見下ろした。

「みーん。みーん…」

…ちょっと今、セミになってる。

「…ごめん。羽久に戻ったら、挨拶に行くよう言っておくから」

「…その方が良さそうだな」

ある程度事情を知っているジュリス君は、あっさりとそう言って引き下がった。

有り難い。

一通り甘えて、満足したら…また羽久に戻ることだろう。

何にせよ、これでジュリス君が合流した。

聖魔騎士団は、また一つ戦力を増やした訳だ。