私は、セミ…と言うか二十音…の頭をよしよし、と撫でた。

本物のセミがいる訳じゃなくて、二十音がセミの鳴き真似をして、遊んでいるだけなのだ。

「二十音セミが来たね~」

「みーんみーん」

可愛い。

物凄く可愛い。

この子、定期的にこうして、私に甘えに来るのだが。

そのときに、こんな風に、動物の鳴き真似をして遊ぶことがある。

私が相手をしてあげるものだから、嬉しいのかもしれない。

とにかく可愛い。

今日はみんみん言ってセミの真似をしてるけど。

にゃーにゃー言って、二十音ネコ…ならぬ、はつネコちゃんになったり。

めーめー言って、二十音ヒツジちゃんになったり、その日によって様々である。

今日はセミの気分らしい。

「みーん。みーん」

「よしよし。二十音セミちゃんだね~」

二十音の頭を撫でてあげながら。

私は、よく考えもせずに余計なことを言ってしまった。

「まぁ、今は季節、夏じゃないんだけどね」

「み、」

二十音はセミの鳴き真似をやめ、じっと私の顔を見上げた。

その目は、今にも泣き出しそうに潤んでいて。

「ごっ…ごめんよ二十音!良いんだよセミの真似しても!最近暑いもんね!夏だね!セミ鳴いててもおかしくないよね!」

一生懸命二十音を慰めつつ、必死にフォローをしている…と。

「あの…学院長。お取り込みのところ済みません…」

「え?あ…」

顔を上げた先に、何とも言えない表情のシュニィちゃんがいた。

…。

「…シュニィちゃん」

「…はい」

「…ちょっと、今の…見なかったことにしてもらって良い?」

「…無理ですね」

「…そっか」

無理だよね。ごめんね。