…ちなみに。

雷魔法の授業が始まり、テキストを開く。

相変わらず書き込みがたっぷりとしてあって、我ながら汚いテキストである。

人に貸すことになるなんて全然考えていなかったから、完全に自分仕様のテキストにしてしまっていた。

もう少し綺麗に使えば良かったな、アトラスさん全然分からなかったかも、なんてちょっと後悔。

「…ん?」

恐らく、今の授業は、先程の時間、アトラスさんのクラスで行われた授業と同じ範囲だろう。

だから、使ったテキストのページも、ほとんど変わらないはず。

そのページも相変わらず自分の書き込みで一杯だったが…。

ページの隅っこ、ほんの少し空いていた余白に。

見覚えのないものがあった。

泣きそうな顔をした小さな猫のキャラクターが、吹き出しつきで、「全然分からない(涙)」と言っていた。

何、この落書き。

私はこんなものを書いた記憶はないので、これは間違いなく、アトラスさんの仕業だろう。

さっきの授業で書いたんだろうな。

テキストを汚されて怒るどころか、私は、思わずふふっ、と微笑んでしまった。

彼は魔導師じゃないから、魔導理論の授業は訳分からないんだろうな。

鉛筆で書かれたその落書きを、私は消さずにそのまま置いておいた。

またこのページを見たら、微笑ましい気分になれるかな、と思ったからだ。