聖魔騎士団に…。それはつまり。

「…俺を利用しようと?」

今まで、何度も受けた誘いだ。

時には優しく、時には強引に。

俺はその全てを断ってきた。

「勘違いしないで。私は『死火』を持つ君を利用しようなんて思っちゃいない」

「…なら、何故?」

「何のことはないよ。君が聖魔騎士団に来てくれたら、心強いだろうなぁと思ったから」

「…」

「それに、聖魔騎士団にいれば、『死火』を狙う不埒者に狙われることもなくなるんじゃないかな」

…確かに、それは一理あるな。

「…月読。どう思う?」

俺は、傍らの月読に声をかけた。

俺の半身である彼女は、真剣な顔で俺を見返した。

「…少なくともこの人、今までの奴らとは違うよ」

「…そうだな」

俺も、そう思う。

今まで俺達を狙ってやって来た刺客達と違って、この人には俺を利用しようなんて気は、全くないようだ。

この人なら信用出来る。

この期に及んで俺は、そう思った。

…誰も信じないと決めたはずなんだけどな。

「…どうかな?無闇君」

「…分かった。どうせ、行く宛もないからな」

「本当?来てくれるの?」

シルナ・エインリーは、嬉しそうに顔を綻ばせた。

「あんたを信用した訳じゃない。信用出来ないと判断としたら、すぐに去るつもりだ」

「勿論、それで構わないよ」

「…それに、エクリプスを倒すのを手伝ってくれた恩もある」

せめて、その分は返さなくては。

「…月読も、それで良いか?」

「君が良いなら、私も良いよ」

月読も、異論はないようだ。

俺が何処に行ったとしても、月読だけは一緒だ。

「…やれやれ。自分の気に入った魔導師がいたら、すぐ味方に引き入れたがるんだから」

横で聞いていた羽久・グラスフィアの溜め息と共に。

俺はこの瞬間から、ルーデュニア聖王国、聖魔騎士団の一員となった。

決して、悪い気分ではなかった。