…そのときだった。

「…『それ』は、いくら君でも手に余るかもね」

俺とエルクの間に、二人の魔導師が立ち塞がった。

「…!?」

「昨日ぶりだね」

振り向いてにこっと微笑んだのは、昨日俺の前に現れて、シルナ・エインリーと名乗った魔導師だった。

何故この男が…ここに。

「何をしに来た…?」

「加勢しようと思ってね」

加勢だと?

「俺に恩を売って、協力させようと?」

「まさか、そんなつもりはないよ」

…とても信じられない。

何か魂胆があるのではないかと思った、そのとき。

エルク・シークスが、口許を歪めた。

「…待っていたぞ、シルナ・エインリー」

…何?

「…やっぱり、目的は私だったんだね」

「そうだ。始めから『死火』になど興味はない。単なる撒き餌だ。お前を…誘き出す為の」

…撒き餌?

シルナ・エインリーを呼び出す為の?

エルクが何を言ってるのか、理解するのに時間を要した。

それは、つまり…。俺は…。

「ルーデュニアの近辺で、焼死体が出たのも君の仕業だね?」

「その通り。『死火』によるものと思われる死体が出れば、お前は間違いなく『死火』を探し始める…。だから俺はこの『死火』の契約者の近くにいれば、必然的にお前に会うことが出来る」

「…やっぱり、そうだったのか」

俺は…利用された、ということか?

エルク・シークスが…シルナ・エインリーを誘き出す為に?