─────…時を少し遡り。

『死火』の持ち主の彼と別れた後。私と羽久は。







「おい。お人好シルナ。何で、みすみすあいつを逃がしたんだ?」

お人好シルナって。

何その呼び方。

「何でって…」

「あいつ『死火』の持ち主なんだろ?ルーデュニアで何人も炭にした犯人なんだろ?何で見逃すんだよ」

それは…そうなんだけど。

「彼は犯人じゃないからね」

捕まえても、何の意味もない。

濡れ衣って奴だ。

「犯人じゃない?お前、また吐月のときみたいなこと言い出しやがって」

悪かったね。

だって彼は犯人じゃないんだもん。

「なら、あの炭になった遺体は何なんだよ?『死火』の仕業じゃないのか」

「うん。『死火』の仕業じゃないね」

「じゃあ誰?シルナ?」

何で私が選択肢に入ってるの?

「私はそんなことしません」

「あいつがやったんじゃないなら、誰なんだよ?」

「…さぁ。それは分からない」

「あ?」

喧嘩腰やめて。

「犯人が誰なのかは分からないけど、彼がやったんじゃないのは確かだよ」

「何だと…?お前そんなこと言って、本当は目星ついてるんだろ?」

ぎくっ。

羽久、君鋭過ぎるよ。さすがだね。

「まさかぁ。目星なんてついてないよ」

「嘘つけ。悪巧みしてるときの顔してるじゃん」

そんな顔してません。失礼な。

「大丈夫だよ。焦らなくても、じきに分かるから」

「またそんな、賢ぶったこと言って…。吐くまでぶん殴ってやろうかな」

やめて。

発想が乱暴にも程があるよ。この子。